you「kiyoと遊びながら作ってきた感覚も大事にしたい」Nicori Light Tours「ヒーローの正偽」リリース・インタビュー

you「kiyoと遊びながら作ってきた感覚も大事にしたい」Nicori Light Tours「ヒーローの正偽」リリース・インタビュー

ギタリストyouが現在ホームとするNicori Light Toursが、2023年に入ってからの第2弾となる最新シングル「ヒーローの正偽」をリリースした。Janne Da Arc時代からの盟友であるkiyo(key)が主にアイデアを出したというこの曲は、インタビュー中でも語られているように彼ら流のパンク的バンド・スタイルを狙った新規軸で、ライヴで爆発的に映える場面がまざまざと想像できるエネルギーに満ちたものだ。今回はその新曲についてをメインに、ツイン・ヴォーカル+ギター+キーボードという個性的な体制で活動するNicori Light Toursについて改めて掘り下げてみるため、色々と話をうかがった。

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Nicori Light Tours - ヒーローの正偽

ヒーローの正偽 / Nicori Light Tours

配信 | Zest inc. | 2023年7月4日発表

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「Nicori Light Tours流のパンク・ロックみたいな曲」というアイデア

YG:このバンドでは初めてインタビューさせていただくので、基本的なことも色々うかがわせていただければと思います。そもそもNicori Light Toursは、youさんとkiyoさんが2人で曲作りする中で自然と生まれたそうですね?

you:そうですね。Janne Da Arcが活動を休止した後、僕はソロとしてギター・インスト・アルバムを作ったりしていたんですが、それも一段落ついて…次に何をしようかという時、僕の中ではkiyoと一緒にやりたいなと思っていたんです。普段から連絡も取っていましたし。だから特に何か目的があるわけでもなく、僕がkiyoの家に行って、2人で半分遊びながらああだこうだ言いつつ曲を作り始めたんです。そうやっている内に何曲か出来上がり、「色んな人に聴いてもらいたいな」と思い始めたのが結成に動くようになったきっかけです。

YG:面白いですね、初期衝動に近いというか。

you:そうですね。感覚としては、自分がバンドを始めた若い頃、大阪で活動していた時のような気持ちだったんです。友達の家に行って遊びながら曲を作っているような、その感じに似ていて。

YG:曲作りの方法は、例えば今回のシングル「ヒーローの正偽」に関しても、当時2人で作っていた時とあまり変わっていないわけですか?

you:そうですね。当時よりはもっとそれぞれが、ある程度まで形にしてしまいますけど。この曲はベーシックな部分をkiyoが作っていて、それを2人でブラッシュアップしながら、途中からヴォーカルの2人も交えて…みたいな感じでした。

YG:お互い最初のデモは、どれぐらい詳しいものを作るんですか?

you:この曲に関しては普段よりシンプルなものにしようとしていたんですが、それでも最初から基本的なリズムなどは、ある程度出来上がってましたね。ギターに関しては打ち込みのコードがざっくりと入ってるくらいで、メロディーもそこそこ…みたいな。

YG:アイデア出しのきっかけが生まれる、ガイドぐらいですか?

you:そうですね。だからリズムのアレンジなんかは、練っていく内にけっこう変わりますし。あくまでも叩き台というところで、ガンガン自由に変えていきます。

YG:作業する時は、例えばラップトップを真ん中に置いて、DAWソフトを打ち込みながら全員で考えるわけですか?

you:僕とkiyoはそうですね、2人で画面を見ながら「ここはこうしようか」とか。最近は僕の家でやることが多いです。あとは、それぞれ自宅で作ったデータを送り合ったり。

YG:そういう現代らしいスタイルにシフトしたのは、いつ頃だったんでしょう?

you:変わっていったのはソロ・アルバムを作り出した頃くらいですね。

YG:『LIFE』三部作の頃ですか。ギタリストのインスト・ソロ・アルバムなので、すべてを自分でコントロールしたいという思いから?

you:そうですね。Janne Da Arcの頃はいわゆるプリプロをやって、ある程度メンバーみんなで決めていたんですけど、ソロになってからは自分で何もかも決めないと物事が進まないので(笑)。明確に細部を自分の中で決めなければいけなかったというのがあって、自然にそうなったのかなと思います。

YG:DAWソフトは何を使われていますか?

you:僕ね、珍しいんですよ。“Digital Performer”なんです。最近あまりいないんですよね。Janne Da Arcの頃からずっと使っていて、一時期“Pro Tools”も使ってみたんですけど、結局“Digital Performer”に落ち着きました。kiyoも同じソフトなので、データのやり取りが簡単なんですよ。ライヴのシーケンスを流すソフトとして使っている方はけっこういますけど、作曲で使う人は少なくなったかも。僕が使い始めた時に流行っていて、慣れちゃったので他に乗り換えられなくて。

YG:MOTUのオーディオ・インタフェイスが爆発的に評価されていた頃ですね。

you:そうですそうです。MIDIの打ち込みが細かくできるので、一時期使っていらっしゃる方がたくさんいて、それで僕も誰かに勧められたのかな? ちょっと覚えていないですけど。

YG:今回インタビューさせていただくにあたって、昔の曲をすべて通して聴かせてもらったんですが…今回の「ヒーローの正偽」はいわゆる昔ながらの“バンドもの”で、Nicori Light Toursのこれまでの路線を考えると新しいですよね。

you:ありがとうございます。まずkiyoと新曲の路線を考える時に、「Nicori Light Tours流のパンク・ロックみたいな曲」というアイデアが出て。それでお互いに作り始め、今回はkiyoのアイデアを基本に進めたんです。

YG:kiyoさんはキーボーディストなのに、パンクもOKなんですね。

you:彼は本当に変わってるんですよ(笑)。彼の作る曲ってキーボードがあまり入っていなかったりするし、特に最初のデモではギターとベースとドラムだけ…みたいなことも多いんですよね。簡単なギターのメイン・リフも入っていたりして。

YG:「こんな風にギターを弾いてほしい」という意思が感じられるわけですね。ちなみにこれまでにリリースしてきた曲は、どちらかと言うとデジタル・ビートが多かったですよね。

you:そうですね。チャレンジというか、今まで僕らがやったことのないようなものをやりたいなと。それで打ち込みを基本に。

YG:そこはyouさん的にもkiyoさん的にも、挑戦だったわけですね。

you:そう、これをどういう風に自分たちで昇華できるんだろう…という気持ちで。でも「ヒーローの正偽」に関してはメンバーみんなで、「バンドっぽいサウンドの曲にしたいよね」と方向を定めて。

YG:やはり自分たちのライヴのステージを思い浮かべながら?

you:そうですね。お客さんの反応や自分たちの演奏を考えると、やっぱりその路線が一番しっくり来るんじゃないかと。

YG:サポートのドラマーとベーシストの方も加えた、バンド・メンバー6人を想定して。

you:そうです。この曲のレコーディングに関しては時間的な問題で、ベースは打ち込みなんですが、ドラムは実際に叩いてもらいつつ、トリガーを使ってMIDIデータにして、別の音源に差し替えるような形です。

YG:これを手で打ち込むのは、相当時間かかるだろうな…とは思いました(笑)。ドラマーならではのゴーストノートなど、細かいこだわりがたくさん見えたので。

you:そういう人間らしい生の感じを、より大事にしたかったんですよ。だからこそ生まれるグルーヴってあるよなと、今回再認識できましたね。

YG:こうなるとベースが打ち込みなのが、逆に面白いですよね。生ベースでこんなに動くラインを弾く人なんて、いないよな…と(笑)。ミスマッチがフックになっているというか。

you:確かにそういう面も、逆に良かったのかなとは感じますね。なるべく生っぽくしようとは思ったんですけど。

YG:その動き回るベース・ラインが、他のパートと合わさると強烈なうねりになっているというか。

you:今回、そういう意味での新しいチャレンジをした結果、パンクっぽいというよりも…何か新しい音が出来上がったような、想像より良くなったと思えたんですよ。