U.D.O.2023来日:ピーター・バルテス「17歳の頃に戻ったような気分だった。とにかく最高だったね」

U.D.O.2023来日:ピーター・バルテス「17歳の頃に戻ったような気分だった。とにかく最高だったね」

去る4月中旬、久々に来日公演を行ない、新旧ファンを歓喜させたウド・ダークシュナイダー率いるU.D.O.。東京2日間のみの限定公演ながら、ウドの古巣:アクセプトの楽曲のみをプレイするダークシュナイダー名義のショウもあり、集まったオーディエンスは日替わりでアクセプト&U.D.O.による独産メタルの神髄を堪能しまくったことだろう。

注目すべきは、ウド(vo)以下、アンドレイ・スミルノフ(g)、ディー・ダマーズ(g)、スヴェン・ダークシュナイダー(dr)に加え、’18年にアクセプトから電撃脱退してファンを驚かせたピーター・バルテス(b)が、そのラインナップに含まれていたこと。しかもピーターは、離日後ほどなくU.D.O.に正式加入! その報には世界中のアクセプト&U.D.O.ファンが色めき立ったに違いない。

今回ヤング・ギター取材班は、ダークシュナイダー名義のショウを終え、U.D.O.としてプレイする公演2日目のサウンド・チェック後に、アンドレイ&ディーとピーターへの対面インタビューの機会を得た。ギター・チーム取材記事(下記リンク参照)に続いては──正に最強の助っ人っぷりで新旧ファンを感激&感涙させまくったピーターのインタビューをここにお届け。取材時間が10分ほどと短く、言わばミニ・インタビューとなってしまったが、それ故に貴重な取材だった…とも言えるのではないだろうか。

’18年のアクセプト脱退についてあまり多くを語ってこなかった彼には、その理由についても尋ねてみたが……さて? また、取材の時点ではまだ話せなかっただけなのか、それとも最終決断に到っていなかったのか、U.D.O.正式加入については明言を避けていたことを、あらかじめお伝えしておこう…。

曲を作れば作るほど若返る…!

ピーター・バルテス

YG:昨日のダークシュナイダーとしてのショウはいかがでしたか?

ピーター・バルテス(PB):素晴らしかったね! とても良かったし、いつもと全く違っていた。ダークシュナイダーとしてアクセプトの曲だけをプレイするのは、これまでになかったからね。

YG:そもそも、U.D.O.のツアーに加わることになったのはどういった経緯で?

PB:(昨年の)9月だったかな? ウドが電話をかけてきて、「ベーシスト(ティレン・フドラップ)が体調を崩したので、助けてくれないか?」ということだった。それで、「イイよ!」と言った…のは良かったんだが、それって火曜日のことで、金曜日までに16曲を覚えなきゃならなくてさ(苦笑)。本番まで本当に時間がなかったんだ。

YG:そうだったんですね!

PB:それから3ヵ月間、ツアーに出ていたよ。ところが、一向にベーシストが戻ってこなくて…。だから、「それなら、日本とオーストラリアも引き続き手伝うよ」となったんだ。

YG:オーストラリアでは、ダークシュナイダーとしてのライヴのみ?

PB:うん。すべてダークシュナイダーとしての公演だった。でも、日本ではU.D.O.としてもプレイするから、今夜はガラッと演目が変わって…(と“頭がいっぱい”という仕草)。

YG:今日、初めてプレイするU.D.O.の曲もありますか?

PB:あるよ…(と指を折って数える)。

YG:元々、短期間で曲を覚えるのはお得意でしょうか?

PB:そんなことないよ。実は今日、お寺に行ってコインを清めてきたんだ。おまじないだ(と、ポケットから100円玉を数枚見せてくれる)。だから、多分大丈夫だと思う。

YG:アクセプトから脱退した理由はあまり話されていないようですが、今だから語れることはありますか?

PB:いや…U.D.O.とダークシュナイダーの話だけにしておこう。今ここにいられることを凄く幸せに思っている…とだけ言っておくよ。

YG:このままU.D.O.のメンバーになるということは?

PB:どうかな? 俺は忙しいんでね。状況次第だ。よく考えないといけない。まぁ、自宅へ戻ってから考えることにするよ。

YG:いま現在、U.D.O.以外にやっているバンドやプロジェクトというと?

PB:沢山ある。日本人ギタリストの若井 望と一緒にやっているASHRAINがあるし、実はソロ・アルバムも作っていてね。あと、コンポーザーとしてアメリカの映画やTV番組に楽曲提供もしている。毎日、自分のスタジオにこもって仕事三昧なんだ。

YG:今もアメリカ在住なのですよね?

PB:そう、フロリダに住んでいる。セッション仕事も色々とやっているよ。最近はミック・マーズのソロ・アルバムでプレイしたばかりでね。ドラムを叩いたのはKORNのレイ・ルジアーで、他にアイルランドやギリシャのミュージシャンが関わっているらしい。

YG:ミックとは古い付き合いなのですか?

PB:いや、プロデューサーのマイケル・ワグナーの紹介だった。彼はナッシュヴィルにいて、俺も以前そこに住んでいたからね。「ナッシュヴィルにはミックのバックでプレイ出来るヤツがいない。すぐにこっちへ来てくれないか?」と頼まれてやったんだ。8〜10曲プレイしたよ。でも、(アルバムが)完成しても俺のプレイだとは分からないんじゃないかな。

YG:今後は、多方面での活躍が期待出来そうですね?

PB:そうだな。常に何かしらやっているから。

YG:昨晩のショウでは、アクセプトの懐かしい曲を沢山プレイしましたが、あなたのリクエストでやった曲はありましたか?

PB:それはなかったけど、「Midnight Highway」はずっとプレイしたことがなくてさ。今回のセットで新しく入った楽しい曲だね。他の曲はよく知っていたから、そこだけリフレッシュする必要があったよ。

YG:去年、ウドと久々に一緒にやることになって、すぐに昔の感覚が戻ってきましたか? 

PB:ああ、最高だった。というか、ウドが正真正銘のレジェンド・シンガーだということを、ついつい忘れていてさ。彼はロニー・ジェイムズ・ディオにも匹敵する。あとは…そうだな……

YG:ロブ・ハルフォードとか?

PB:そうそう! だから、何だか17歳の頃に戻ったような気分だった。とにかく最高だったね。

ウド・ダークシュナイダー

U.D.O. ピーター&ウド

YG:去年の夏にもドイツでU.D.O.のステージを観たんですが、昨日のウドはその時よりも声がパワフルで驚きました。

PB:いや〜ホントそうだね! 未だに凄まじい声をしている。俺はいま65歳で、彼はもう71歳!! つい最近──4月6日になったばかりでさ。俺が4月4日生まれだから、2日しか誕生日が離れていないんだ。

YG:その年齢になると、普通は衰えていくスピードが増すはずなのに、むしろより声が出るようになっているなんて驚異的です。

PB:よく熟成したワインが2本…という感じだな。このバンドにはあと、ペプシ成分も含まれているけど(笑)。

YG:あなたもずっと若々しく、ご自身では、もはや歳を取るのを忘れてしまっているのでは…?(笑)

PB: そうかもしれない。歳を取る気がしないね。自宅では普段、朝7時に起きて、8時にはもうスタジオに入って仕事を始める。毎日働いているよ。あと、走ったり、運動もしているんだ。それが若さを保ってくれているんだろう。音楽を作り続けている限り、俺は素晴らしい気分でい続けられるのさ。曲を作ると若返る。何かを生み出すことを止めたら、人生がつまらなくなてしまうだろうな。俺の世界では、曲を作れば作るほどどんどん若返る…ってことが分かったから(笑)。

YG:アメリカに住んでどれぐらいですか?

PB:もう40年になるかな。ドイツより長いよ。

YG:でも、こうしてまたドイツ人同士でバンドをやっていると、ゲルマン魂が甦ってきませんか?

PB:いや、全然(笑)。それに関しては、もう何も残っていないんだ。

YG:ギターの2人から刺激をもらうことは?

PB:いつも彼等から学ぼうとしているよ。連中は、俺達とはモノの見方が違っていて、スマホの使い方だって教えてくれる(笑)。プレイ・スタイルが異なっているのは素敵なことだ。俺は常に成長していたいし、新しいテクニックを身に付けたいとも思っている。だから、連中のプレイの中から「今のはクールだな」と思えるモノを見付けたり、「それなら俺でも弾けるぞ!」と発見することがよくあるんだ。“ダンダンダン♪”と弾くこともあれば、“トゥルルルルル…♪”と速いフレーズを弾くこともあるけど、これまで後者はやってこなかった。でも今じゃ、俺も一緒に“トゥルルル”と弾くし、“ダンダン”のところだけ弾いて空間を残したりもする。若者と一緒だと学びがあってイイね! 年寄りばかりだと、熟成ワインが5本だけになってしまう…(苦笑)。

YG:では最後に、いま弾いているベースについて教えてください。

PB:メインのベースは、1959年製のP-bass(フェンダー・プレシジョン・ベース)で、これは自宅でのレコーディングでも使っている。もう作られていないモデルで、あまり(市場に在庫が)残っていないんだ。そこで、テキサスのフォートワースにあるヴィンテージ・ギターを取り扱う会社に持ち掛けて、カスタム・ベースを製作してもらってね。EMGピックアップを搭載していて、ブリッジは“Badass”。ネックは俺の古いベースと同じにしてもらっている。あと、キル・スイッチが付いていて、曲が終わったらすぐにこのスイッチを押すんだ。

アンプは使っていないし、今や必要ない。俺の手(右手の弾き方)がアンプの役割を果たすと思っているから、PA直でプレイしているよ。昔はアンプ・ヘッドを3台並べて、キャビネットを6台用意して…とやっていたけどさ。音というのは、自分の心、それから自身のプレイに対する姿勢から出てくるんだ。そう信じているから、アンプやペダルを置くのも良いけど、今は「これが俺のサウンドだ」と確信出来る。自分の右手さえあれば…ね! かなりハードなピックを使い、ピッキングも激しめにしていてさ。凄く強めに弦をヒットするんで、(ピックが)1曲しか持たないことだってあるんだよ。

ピーター・バルテス&ベース

YG:これまでに色々なラインナップのU.D.O.を観てきましたが、昨晩のショウを観て、ウドと共にプレイするあなたの音、プレイ、存在感に、「やっぱり本物だな!」と感じ入りました。

PB:(日本語で)アリガトウ! これからも頑張るよ!!

 
ダークシュナイダー バンド