NAMM2020 YGレポート

新生ゼマイティス特別インタビュー:伝統の継承と前進[NAMM 2020特集]

新生ゼマイティス特別インタビュー:伝統の継承と前進[NAMM 2020特集]

1955年にトニー・ゼマイティスによって創立されて以来、彫金加工が施されたメタル・トップや美しいシェル・トップのゴージャスなギターで人気を博してきた“ゼマイティス”。2003年からは日本の神田商会がブランドを引き継ぎ、数々の有名アーティストや一般のプレイヤーたちに愛用されてきた同ブランドが、アメリカを拠点とした新体制となってニュー・モデルを発表した。その“ゼマイティス・ギター・カンパニー”のゼネラル・マネージャーを務めるグレッグ・ティモンズ氏に話を聞いた。会場のブース内の写真と共に、その内容をお届けしよう。

「私たちのゴールは自分の音を創りたいプレイヤーのためにギターを作ることです」

YG:神田商会の主要ブランドの1つであるゼマイティスが、米カリフォルニアを拠点とした“ゼマイティス・ギター・カンパニー”という新体制となって始動することになった経緯を教えていただけますか?

グレッグ・ティモンズ:神田商会の下で長年に渡って展開されてきたゼマイティス製品はトニー・ゼマイティスの遺志を継承し、ここまで素晴らしい成果を残してきました。そして私たちは、そこからさらに “前進”することが重要だと感じたのです。トニーが作り上げたデザインを継承するだけではなく、現代のプレイヤーのニーズも反映させた“新しいゼマイティス”を作ろう──それが私たちの目的でした。トニーはとても先進的な人でしたから、おそらく彼自身もゼマイティスが前進していくことを望んでいたと思います。

YG:具体的に、どういった部分が“新しいゼマイティス”となっているのでしょうか?

グレッグ:これまでゼマイティスは伝統的なスペックの製品を作り続けてきました。しかし、新たな要素を取り入れられる部分もあるのではないかと思ったのです。たとえば、トニーが手掛けたヘッドのデザインはとても個性的で、ゼマイティスの象徴とも言えるものです。しかし、ボディー・シェイプはもっと違った方向へも拡張できるのではないかと考えました。例えば、新しい“ZV”モデル。これまでゼマイティスで作られていたVシェイプ・ギターはギブソンからの影響が強い印象でしたが、この新しい“ZV”はよりモダンで独自のシェイプになっています。また、これまでボディー材はマホガニーでしたが、こちらはコリーナを採用していて、より開放的なサウンドが得られるようになっています。その他にも、ナットのデザイン、ジャックやストラップ・ピンの位置などにもこだわりました。私自身を含む“ゼマイティス・ギター・カンパニー”のスタッフはギター開発に関わる一方で、自身がプレイヤーでもあるので、エンジニアとしてではなく“プレイヤー視点”で自らのアイデアを反映させ、プレイアビリティやサウンドにこだわって作り上げていきました。その上で、やはりギターは美しくなくてはなりません。私たちが新たに作り出したシェイプとトニーのデザインが融合することで、他のコピーではない私たち独自のギター、新しいゼマイティスが生まれたと思っています。

ゼマイティス 2
数々の名ギタリストに愛された、ゼマイティスの伝統が息づくモデル。
ゼマイティス 3
ゼマイティス 4
ゼマイティス:ヘッド
故トニー・ゼマイティス氏が手掛けた伝統的なヘッド形状から発展したデザイン。“Z”の印と彫金による装飾も大きな特徴だ。
ゼマイティス:ロゴ・プレート
かつて“A.C. ZEMAITIS”と表記されていたロゴは“ZEMAITIS”に変更された。
ゼマイティス:ZVシリーズ
新しい“ZV”シリーズ。木目を目立たせたシースルーやグロスのフィニッシュなど、モダンなアプローチを積極的に取り入れていることが分かる。
Zemaitis : ZV
“ZV”に従来のゼマイティスならではのメタル・プレートが搭載されたヴァージョン。
ゼマイティス:ZV
攻撃的でありながらも優美な曲線を描くボディー・シェイプと、プレート一面にあしらわれた植物の模様に思わず見入ってしまう。

YG:今後もさらに新しいシェイプが展開されていく予定はあるのでしょうか?

グレッグ:はい、そのつもりです。私たちは常に話し合い、新しいアイデアを出し合っています。新しいボディー・シェイプもありますし、夏には新しいベースも発表できると思います。全く新しいユニークなシェイプなんですよ。私たちは、どこにも限界を設けていません。思いついたものは何でも試してみます。もう1本、新しいギターを紹介しましょう。この“SCW22”モデルは昔ながらのトニー・ゼマイティスの影響を受けたモデルです。しかし、このボディー・シェイプを気に入った人の誰もが、3ピックアップやディスク・フロント、変わった配線まで必要とするとは限りません。単純にこのボディー・シェイプが好きだ…という人もいるのです。それを踏まえて製作したモデルで、シンプルな2ハムバッカーで、ヴォリューム、トーン、3ウェイ・ピックアップ・セレクターというシンプルかつエレガントな仕様になっています。ボディー・バックにはコンター加工も施されていて、より使い勝手の良いものになっていると思います。私たちは、決してトニー・ゼマイティスのレガシーをないがしろにしているわけではありません。彼の名前は生き続けますし、彼の影響も残していきます。しかし、私たちは“ゼマイティス・ギター・カンパニー”として、よりプレイヤー目線で自分たちのヴィジョンに忠実であるべきなのです。

ゼマイティス:SCW22
ゼマイティス“SCW22”。
ゼマイティス:SCW22
2ハムバッカーにP.U.セレクター、ノブは1つずつとシンプルな設計だが、ブリッジ・サドル両端の飾りにゼマイティスらしさが宿る。

YG:新生ゼマイティス・モデルは、どんなプレイヤーにオススメでしょうか?

グレッグ:私たちは、ギターの質が良ければ誰にでも、どんなプレイヤーにも弾いてもらえると考えています。対象を絞ることなく、とにかく良い音が出て、弾きやすいギターを作りたいのです。最高のルックスと最高のサウンド、最高のプレイアビリティを伴ったギターを。そうすれば、それに見合ったプレイヤーがこの楽器を自ずと見つけてくれるでしょう。私自身はオールドスクールなプレイヤーですが(笑)、この新しいゼマイティス・ギターを持ってロックンロールからカントリーまで、どんなスタイルでもプレイできますよ。どんなスタイルであっても、弾きやすくて素晴らしい音ですから。もちろん、ヘヴィ・メタルだってプレイできます。

YG:日本のギター・プレイヤーにメッセージをお願いします。

グレッグ:私たちのゴールは1つだけです。自分の音を創りたいプレイヤーのためにギターを作ることです。“ゼマイティスの音”を出してもらうのではなく、個々の音を作ってほしいのです。ゼマイティスのギターを使っても1人1人の音は違うし、あなたが弾けばあなたの音になるのです。私たちのギターを通して“自分の音”を出してほしいと思っています。それが一番大事なことですね。日本のプレイヤーの皆さん、ぜひゼマイティスのギターを弾いてみてください。そして、他の誰にも似ていない“自分の音”を出してください。

ゼマイティス:スタッフ
ゼマイティスのスタッフ。左からグレッグ・ティモンズ氏、小嶋正敏氏(神田商会 代表取締役社長)、並木邦夫氏(神田商会 開発部部長)。

ゼマイティス:スタッフ&エンドーサー
エンドーサーの1人である、エルヴェイティのギタリスト:ラファエル・ザルツマンと一緒に。

INFO

ゼマイティス公式ウェブ / 神田商会

Zemaitis Guitar Company

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